空色の瞳にキスを。
サシガネの問いがペンダントを指していると気付いたユリナは、それに手を添えて、大事そうに笑う。


「これ、前いた町の友達から貰ったんです。」

幸せそうに笑うユリナを、トキワたちが見る。


─あたしが彼女から貰った、大事で大事で、手放せないもの。


ハルカだったあの頃に、彼女がくれた青い石。

綺麗だからあげるよ、と言って自分にくれた綺麗なペンダント。

アズキたちはきっと、裕福ではない。

その彼女が安い小遣いをはたいて街で買ってくれたもので、余計に大事に思える。

そんな、初めての友達からのプレゼント。


ちらり、とトキワとサシガネが目配せをして。

『友達』を大事にする彼女の姿に、トキワの声音が変わる。


「こんなに古いものを?」

少しだけ見下したような、そんな声。


どれだけ安っぽくても、古ぼけていても。

ユリナにとって高い宝石よりもどれ程価値があるのか分からない。

それを、嘲笑う。


「そんなに大事なの?

その友達。」

馬鹿にした、いつもと違う冷たい声で、価値を否定する。


ぴしり、と穏やかだった空気に亀裂が走る。


ユリナの笑顔が凍りつく。

五人でいる廊下が、やけに寒く感じた。


トキワはゆっくりと、ユリナの気持ちを踏み砕く。

その気持ちを、手放せと言うように。

つまらないとでも言うように。



「そんな石なんか捨てちゃいなよ。

要らない繋がりをずっと持ってたって、辛いだけでしょ。

…捨てればいいのに。」


そんな冷たい言葉がユリナに、ナナセに刺さる。

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