空色の瞳にキスを。
そして、鋭い銀色の瞳をナナセに向ける。

「最後に、ナナセ。覚えておきなさい。

このルイの石は、大きな魔力の源。
その魔力を狙う人も沢山いる。それに、ナナセは魔力が強いから、ナナセ自身が首狩りの賞金首になるかも知れない。

それがナナセの運命を変えるかも知れない。

だけど、運命に抗いなさい。

いつかきっと、道が開けるから。」

いつもとは違うカイにはっとして、ナナセはしっかりと頷いた。


「うん。約束する。

あたしは、この石をちゃんと守るよ。
それにおじいさまの夢見た、平和をつくるよ。」


カイは、はっと驚いた顔をした。

「石から記憶を見たのか?

大きな魔力を持ち合わせていないと見えないと母から聞いたのに。

やっぱりナナセはすごいな。
とうさんには見えなかった。
大きな魔力はお母さん譲りだ。」

悲しそうに、カイは笑った。


「さぁ、今日はたくさん話したな。
もう寝ようか。」

ぽん、と大きな手を頭に乗せられて、抵抗できなかった。
なんだか帰りたくない。


「……うん。」

けれど促されるままに、ナナセはカイの部屋を出た。
ナナセはそこでやっと息を吐いた。


大きな装飾のある綺麗な扉を振り返って、さっきまでの予想もしなかった話を思い出す。


──あたしのお母さんは、殺された。

──とうさんは、昔話のルイの石の継承者。その石をあたしにくれた。

──あたしも殺されたり、狙われるかもしれない。


ナナセ自身のことなのに、自分が遠い遠い存在に見えた。

誰かと入れ替わったみたいに、平凡な王女の日々が8歳のこの日を境に終わりを告げた。

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