空色の瞳にキスを。
金色の瞳同士が絡み合い、ルグィンが睡眠薬を混ぜた理由を問う。

「じゃあなんで…。」


そんなものを紅茶に、と続きの言葉は最後まで言えずにスズランが上から言葉を被せる。


「ただ、守りたいだけ。
私の勝手で、ナナセをあの二人と戦わせたくないだけ。」


自分の勝手だって知っているわ、と小さく早口で付け加えた声はルグィンにも聞こえた。

後悔の混じったやりきれない表情で、スズランはルグィンに視線を合わせる。

珍しく感情を表に出してイライラしたように整えられた金髪を右手で乱す。


「…特にサシガネ。

サシガネは、狡猾すぎる。
ナナセは優しいもの、あの子は騙されるわ。

騙されなくても、私たちより、傷付く…。
だから…こんな…。」


馬鹿なことしたわ、と溢したのもルグィンには聞こえた。


「知らせなくてごめんね…。」


昼まで空は晴れていたのに、もう雲が沸き、今にも雨が降り出しそうだ。


真っ白で、優しい腕の中の少女は、守られて喜ぶだろうか。

スズランには悪いが、ルグィンはそう思った。


「俺たちに守られて、こいつは喜ぶか…?
きっと、俺たちと戦いたいと言うんじゃないか?」


「…ッ…。」


スズランは自分がしたことに後悔しているような顔で額に手を当てる。

そして一度大きなため息を落として、黒猫の少年を見た。

「ナナセが起きたときに、謝るわ。

勝手なことして、ごめんね。」


いつも底抜けに明るく振る舞うライオンの少女は、この時だけは弱々しかった。

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