空色の瞳にキスを。
しん、とまた静まり返った部屋の中。

話が一度キリがついたと見たルグィンは、抱き締めたままだった銀髪の少女を抱き抱えて立ち上がる。

眠っているナナセをベッドへと寝かせる。


甲斐甲斐しく彼女に布団をかけてやるこのいつも無愛想な少年を見て、スズランは口を開く。


「貴方はこの子を守りたくないの?」


スズランが何の気なしにした問いに、ルグィンは瞬きをして固まる。


「俺は…別に。
こいつは、優しくて弱いけど…多分芯は強いから。
強い信念がきっとあるから。」

ふい、とスズランから視線を外す。

木目の美しい床に敷かれた絨毯から、白く輝く壁へと彼の視線は動き、定まらない。


「ただ守るだけじゃあいつを弱くするだけだろ。

方法は分からないけど、違う方法で守りたくは、なる。」

彼女のことを喋るうちにルグィンの表情が緩んでいく。


いつもはきつく冷たい声音も、どこか優しくて。


ベッドの側に立ち、眠らされているナナセの銀色の前髪に軽く指先で触れる少年を、獅子の少女は可愛く思う。



─自分にとって大切になった二人も、第三者から見たら、闇に染まった異形と犯罪者。

彼らを捕らえようとするものが必ずいる。

スズランは静かに祈った。




どうか、二人に何もないままでこの場所に帰ってきて。


< 114 / 331 >

この作品をシェア

pagetop