空色の瞳にキスを。
──夢を見た。
慕われていた初代国王の視界で、国王が殺されていく様を。
祖母と思しき女の人には子供を抱えて逃げさせて、部下に護られていた彼は部下の前で敵の魔術弾に当たった。
追い詰められた祖父は、誰も傷付かないよう皆に平和を与えようと魔法を使った。
──そう、与えるために──
ナナセは飛び起きた。
寒いはずなのに、首筋に汗が伝った。
写真を嫌った祖父は、写真にすら残っていない。
姿すら知らない、建国の祖である自分の祖父を、やっと近くに感じられた。
──魔力を使って、たくさんの人をほんとうに幸せにしたかったみたい。
──それは──自分の魔力を、命を使い果たしていいほどに。
夢心地のまま、ナナセは白いワンピースを手に取り廊下を見遣る。
今日はやけに廊下を走る使用人の足音が耳についた。
初代が亡くなり、隣の大国には数で圧され、敗戦と言う名で王の近くにフェルノールの手先を置かれた。
それからは、王城のお金をまた切り詰められ、貯蓄に回された。
もともと贅沢をしなかったのにそれ以上削られた為、使用人の削減にかかるしかなかった。
だから、王も王女も自分で出来ることはする。
着替えながら、ふと気がついて鏡の前に立ち止まる。
ちゃんと、今でも左目に魔法陣が映っていた。
その濃紺をながめて現実と確かめると、父のように前髪を垂らして左目を隠した。
そして左目が見えないようにして、横髪を青いリボンで結ぶ。
右目は見えるようにして同じように結んだ。
そうすれば見た目がどこか父に似ている気がして、少しだけ父に近付けた気がして、心は弾む。
父かロウに会いに行こうと廊下に出た途端に騒がしくなる。
「──ナナセお嬢様」
遠くから声をかけられ、足音が近づいてくる。
ナナセは足音のした方を振り向いた。
「ライ?」
金髪に黒髪の混ざった変わった髪の色に細い長身を際立たせる黒いスーツを羽織ったライが、ナナセの前に立っていた。
「どうしたの?」
ぱっとナナセはライの顔を見上げる。
すると、ライはナナセの視線を逃れるように視線を外した。
悪い予感が、背中を舐めた。
やけに静かになった廊下に、ナナセの予感が的中する。
「──カイ様が」
まさか、となにともつかない危機感を抱いて、ライを置いてナナセは父の部屋へ走り出した。
後ろからライが叫んでいたけれど、今はそれどころではなかった。
長いスカートの裾に足を取られそうになりながら、朝の人通りの多い廊下をもみくちゃになりながら駆けた。
まさか、と逸る心は体が追い付けない。
いつも見慣れたカイの寝室の扉の彫刻が今日は不気味に見える。
いつになく重い扉を開いた。
慕われていた初代国王の視界で、国王が殺されていく様を。
祖母と思しき女の人には子供を抱えて逃げさせて、部下に護られていた彼は部下の前で敵の魔術弾に当たった。
追い詰められた祖父は、誰も傷付かないよう皆に平和を与えようと魔法を使った。
──そう、与えるために──
ナナセは飛び起きた。
寒いはずなのに、首筋に汗が伝った。
写真を嫌った祖父は、写真にすら残っていない。
姿すら知らない、建国の祖である自分の祖父を、やっと近くに感じられた。
──魔力を使って、たくさんの人をほんとうに幸せにしたかったみたい。
──それは──自分の魔力を、命を使い果たしていいほどに。
夢心地のまま、ナナセは白いワンピースを手に取り廊下を見遣る。
今日はやけに廊下を走る使用人の足音が耳についた。
初代が亡くなり、隣の大国には数で圧され、敗戦と言う名で王の近くにフェルノールの手先を置かれた。
それからは、王城のお金をまた切り詰められ、貯蓄に回された。
もともと贅沢をしなかったのにそれ以上削られた為、使用人の削減にかかるしかなかった。
だから、王も王女も自分で出来ることはする。
着替えながら、ふと気がついて鏡の前に立ち止まる。
ちゃんと、今でも左目に魔法陣が映っていた。
その濃紺をながめて現実と確かめると、父のように前髪を垂らして左目を隠した。
そして左目が見えないようにして、横髪を青いリボンで結ぶ。
右目は見えるようにして同じように結んだ。
そうすれば見た目がどこか父に似ている気がして、少しだけ父に近付けた気がして、心は弾む。
父かロウに会いに行こうと廊下に出た途端に騒がしくなる。
「──ナナセお嬢様」
遠くから声をかけられ、足音が近づいてくる。
ナナセは足音のした方を振り向いた。
「ライ?」
金髪に黒髪の混ざった変わった髪の色に細い長身を際立たせる黒いスーツを羽織ったライが、ナナセの前に立っていた。
「どうしたの?」
ぱっとナナセはライの顔を見上げる。
すると、ライはナナセの視線を逃れるように視線を外した。
悪い予感が、背中を舐めた。
やけに静かになった廊下に、ナナセの予感が的中する。
「──カイ様が」
まさか、となにともつかない危機感を抱いて、ライを置いてナナセは父の部屋へ走り出した。
後ろからライが叫んでいたけれど、今はそれどころではなかった。
長いスカートの裾に足を取られそうになりながら、朝の人通りの多い廊下をもみくちゃになりながら駆けた。
まさか、と逸る心は体が追い付けない。
いつも見慣れたカイの寝室の扉の彫刻が今日は不気味に見える。
いつになく重い扉を開いた。