空色の瞳にキスを。
■4.淡紅玉の瞳
1.少女と先見
ひとつだけの埃っぽい窓から差し込んでくる光が、その部屋を薄明るくする。
小さな埃が、陽射しにキラキラと舞う。
床にうずくまり眠る茶色の優しい髪色の少女と、壁を背もたれにして座る日に焼けた焦げ茶の混じった黒髪の少年。
眠る少女を、少年が揺り起こす。
「ん…なぁに?」
「今日でここに連れてこられて何日目…?」
俯いた頭が呼び声に反応して呼び掛けられた方へと上がる。
茶色の瞳が呼び掛けた少年を見る。
「今日で…。」
少女が壁に寄っていき、壁に鉛筆でつけられた傷を数える。
「今日で、27日目…。
私たちが連れ去られたのは…ハルカと別れて15日目だから…、全部で42日ね。」
その答えを聞いて彼はため息をつく。
もうそろそろこの施設で開発のためだけに部屋の外へ出されて、それ以外は魔術の使えない部屋に閉じ込められるのは辛くなってきた。
いいように獲物を釣る餌にされて。
自分の魔力を強くされるのはまだ我慢が出来るけれど、大事なひとの迷惑になっていると毎日聞かされる言葉は当たっていて苦しい。
アズキもふぅ、と息を吐く。
「…トーヤ。
誰もいないよね…?」
茶髪の少女、アズキの声が少しだけ鋭くて、トーヤと呼ばれた少年は顔をあげた。
真剣な茶色の瞳と褐色の瞳がぶつかる。
きょろきょろとあたりを見回してから、トーヤは小声で答えた。
「いないよ?」
その答えに安心したアズキは、口を開く。
「あたし、先見の才があるでしょう?
…今、視たよ。
ナナセと連れの子が、リョウオウに着いたわ。」
まっすぐに、自分が視た光景をトーヤに伝える。
「そうかぁ!」
ぱっとトーヤの笑顔が花開く。
「連れは…女?」
遠慮がちにトーヤが尋ねる。
「ううん、違うわ。
黒猫さんっていう男の子みたいよ。」
ふふ、と少女は笑って答える。
「え…!あいつか!」
その答えに、アズキが目を丸くして驚く。
「知ってるの?」
「あ、噂でな。
確か政府直属のとても強い軍人だったはず…。
『黒猫のル……うーん…。」
少女の連れの肩書きを、必死に思い出そうとしながら少年は呟く。
その答えをいい加減に聞いて、少女は小さく笑う。
「ふぅん…、あんな優しそうな人が…。」
そう言って視た光景を思い返すアズキを睨んでから、視線を鍵のついた閉ざされた扉に移す。
そして、考えたくなくて話を少しずらす。
「今日は確か…俺の家族がアズキの家に行く日だな。
俺がいなくなった今も行ってるといいな…あ、いや、行ってない方がいいのかな。」
言いながら少年は混乱に陥り、頭をがりがりと掻き、舌打ちする。
「トーヤ…。」
それを見てアズキが小さく呟きを漏らす。
「俺らを助けに来てほしいけど、来てほしくない…、この気持ちってなんなんだろうな。」
アズキに向けられたトーヤの泣きそうな笑顔が、痛々しかった。
小さな埃が、陽射しにキラキラと舞う。
床にうずくまり眠る茶色の優しい髪色の少女と、壁を背もたれにして座る日に焼けた焦げ茶の混じった黒髪の少年。
眠る少女を、少年が揺り起こす。
「ん…なぁに?」
「今日でここに連れてこられて何日目…?」
俯いた頭が呼び声に反応して呼び掛けられた方へと上がる。
茶色の瞳が呼び掛けた少年を見る。
「今日で…。」
少女が壁に寄っていき、壁に鉛筆でつけられた傷を数える。
「今日で、27日目…。
私たちが連れ去られたのは…ハルカと別れて15日目だから…、全部で42日ね。」
その答えを聞いて彼はため息をつく。
もうそろそろこの施設で開発のためだけに部屋の外へ出されて、それ以外は魔術の使えない部屋に閉じ込められるのは辛くなってきた。
いいように獲物を釣る餌にされて。
自分の魔力を強くされるのはまだ我慢が出来るけれど、大事なひとの迷惑になっていると毎日聞かされる言葉は当たっていて苦しい。
アズキもふぅ、と息を吐く。
「…トーヤ。
誰もいないよね…?」
茶髪の少女、アズキの声が少しだけ鋭くて、トーヤと呼ばれた少年は顔をあげた。
真剣な茶色の瞳と褐色の瞳がぶつかる。
きょろきょろとあたりを見回してから、トーヤは小声で答えた。
「いないよ?」
その答えに安心したアズキは、口を開く。
「あたし、先見の才があるでしょう?
…今、視たよ。
ナナセと連れの子が、リョウオウに着いたわ。」
まっすぐに、自分が視た光景をトーヤに伝える。
「そうかぁ!」
ぱっとトーヤの笑顔が花開く。
「連れは…女?」
遠慮がちにトーヤが尋ねる。
「ううん、違うわ。
黒猫さんっていう男の子みたいよ。」
ふふ、と少女は笑って答える。
「え…!あいつか!」
その答えに、アズキが目を丸くして驚く。
「知ってるの?」
「あ、噂でな。
確か政府直属のとても強い軍人だったはず…。
『黒猫のル……うーん…。」
少女の連れの肩書きを、必死に思い出そうとしながら少年は呟く。
その答えをいい加減に聞いて、少女は小さく笑う。
「ふぅん…、あんな優しそうな人が…。」
そう言って視た光景を思い返すアズキを睨んでから、視線を鍵のついた閉ざされた扉に移す。
そして、考えたくなくて話を少しずらす。
「今日は確か…俺の家族がアズキの家に行く日だな。
俺がいなくなった今も行ってるといいな…あ、いや、行ってない方がいいのかな。」
言いながら少年は混乱に陥り、頭をがりがりと掻き、舌打ちする。
「トーヤ…。」
それを見てアズキが小さく呟きを漏らす。
「俺らを助けに来てほしいけど、来てほしくない…、この気持ちってなんなんだろうな。」
アズキに向けられたトーヤの泣きそうな笑顔が、痛々しかった。