空色の瞳にキスを。
外へ出れば、曇り空だった。


「夜はあんなに綺麗な星出ていたのにね…。」

庭へ出たファイの姿をしたナナセが空を仰ぎ、独り言のように呟いた。


二人の黒髪とスズランのくれた革の服が冬の風にふわりとなびく。


「そうだな…。
あんなに晴れていたのにな。」

黒猫が革の帽子を右手で押さえながら、ぼんやりと呟く。


「ルウくんとファイちゃん、一緒に見てたの?」


「あぁ…はい。
たまたま一緒に屋根の上で。」

ルウとは今返事をしたルグィンのこと。

偽名ではないが、名前は無闇に明かさない方がいいとの判断だ。

昨日の夜の影響か、彼は昔家族に呼ばれていたと言う名を選択していた。


もう荷物は持っていていつでも出ていける格好の二人を、またリョウオウの5人が見送りに集まる。

「あ、サヨさん、カルヤさん。」

ソライの家の庭から見える道に、見慣れた人影が見えた。

黒髪の少女が手を振ると、二人は小走りで近寄ってきた。



「…気を付けてね。」


サヨがファイの手を握ると、ファイは強気な瞳で答えた。

「大丈夫ですよ。
きっと連れ帰ります。」


その瞳に、ほっと皆が安堵した。

決意が鈍らないうちに、ファイは旅立とうとルグィンの方を向く。

「じゃあ、行くか。」

ぽつりと呟かれた黒猫の一言で、運命が加速する。


「うん。」


「じゃあ、私達の子を、頼んだよ…!」


「もちろん!」


エリの声にファイが強く答えると、二人は駆け出す。

ファイは青く光る魔力で、黒猫は強い脚力で空へと飛び上がる。

一瞬で、二人の姿は小さくなる。

「あっ…。」


瞬間、小さな風が地上に残された大人たちの間をすり抜けていく。


振り返った少女が手をあげて。

「いってきます!」


今度のここでの旅立ちは、笑って言えた。

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