空色の瞳にキスを。
メノウは軍の街。

武具や武器、魔導具も売っている。


日が陰り寒さが身に堪えるはずなのに、大通りは沢山の武人たちで賑わう。

緑色がどこかに入った軍服がそこかしこに溢れている。

緑は今の国の象徴的な色。

国軍の中枢であるこの街には、国から支給された軍服を着る人が山ほどいるのだ。


そんな中、フードを目深に被り他と紛れて大通りを歩く二人の軍人。

茶色い革の軍服は、緑が取り入れられていない。

小さく華奢な人影と、長身で細身の人影。


「ルー、人いっぱいだね…。」

ぼそりと小さな人影が呟くと、もう一人が答える。


「あぁ、そうだな。
俺がいた屋敷に入れるか…もう少し待とうか。」


「うん…。」

ファイの姿をしたナナセが少年と目を合わせて頷くと、ルグィンは視線を前に戻して歩き続ける。


「おい、お前。

何で緑がないんだ。」

後ろから男の声がかかり、ルグィンは肩を掴まれる。


「あ?」

ルグィンが振り向き、帽子から微かに覗く金の瞳を相手に向ける。

ファイもつられて振り向けば、20歳位の目深に被った帽子から少し赤髪がはみ出た長身の男が立っていた。

ファイが見守る前で二人は見つめ合い、雑踏の中で固まっている。

「「…。」」


沈黙を破り赤髪の男が呟いた。


「…ルグィン…?」

ファイの頭上で長身の二人は見つめ合う。


「…ナコ…?」

ルグィンも目の前の男に言葉を返す。

目を些か丸く見開いて、黒猫がポツリと返すと、目の前の赤髪の男はニカリと笑った。


「やっぱり。

やっぱりルグィンだ。」

知り合いを見つけたその笑顔は彼を幼く見せる。

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