空色の瞳にキスを。
ナコは案外お喋りなのかも知れないと、ファイは思った。

─気を遣わせて喋ってくれているならば、悪いんだけど。


そう思いながらファイはナコに目を合わせて話を聞く。



「俺はこいつの同僚、ってところか。

…もう3人しかいない同僚だがな。」

多くを語らないこの言葉で、ファイであるナナセは彼が誰なのか分かった。


─同じ改造人間で、昨日の話に出てきた国内警備部特別指令課の、もう一人の人。


微かに浮かんだナコの笑顔に陰りが差す。


「こいつと同じ、改造人間だよ。」

初対面だから簡単な自己紹介でいいはずなのに、ナコはあたしが黒猫の知り合いだからか深くまで説明をしてくれる。



ちらりと帽子をずらして見せてくれた頭には、大きな赤茶の狐の耳。


ルグィンと同じように異形だと知らされて、ファイはごくり、と唾を飲んだ。

─ここにも、あたしのせいで辛い思いをした人がいる。


「俺はナコ。

今年で21になる。

戦災孤児で名はナコとしか記憶にないが、改造された時点で付いた姓はミレーニだ。

ミレーニと言えば軍には俺しかいないから、きっと分かるさ。

覚えておくと便利かもな?」



─軍の人。


─あたしを追う側の人。


敵になるかも知れないと分かっているのに笑顔で差し出された手を握るのは、いつになっても慣れなくて。



「よろしくね。」


貼り付けた笑顔で上手く笑えているのか分からなかったけれど、少女は笑う他なかった。

話もよく切り替わるらしい赤髪のこの男。

今度は黒猫へと話を振る。

「あ、そうだ。

ルグィン、最近どうだ?
首狩りの調子は?」



─え?

紡ぎ出されたナコの言葉に、内心ファイは固まってしまう。



「…最近はこいつが怪我してたから付きっきりだった。

お前は?」


─嘘。


─否定、しないんだ。


ぐらぐらと揺れる少女の瞳に二人ともが気付かないから、一人動揺するファイ。

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