空色の瞳にキスを。
リクの忠告にはふ、と微笑んで妖しい声を廊下に響かせる彼女。

目は強く光を持っている。


「平気よ。ばれたらばれた時。


ある程度私が認めた人には私の腹黒さの犠牲になって頂くわ。」

だってこっちが本当の私だもの、とあっけらかんと笑うその姿は少しの純粋さを取り戻している。

だけどその表情は一瞬で、また影のある表情へ戻る。


「あの子達みたいに闇を知っても、純粋なままでいられる強さなんか私には無いもの。」


自嘲気味に笑うスズラン。

口を閉ざして俯き、金に近い瞳を伏せる獅子の少女の頭に白い大きな手が乗る。


「お前は昔から変わらないなぁ…。

まぁ、スズラン嬢はそれで良いな。
その方がお前らしいよ。」


リクがふわりと笑う。
彼のものとは思えないほどに優しく、甘く。

それにスズランは固まるが、それを感じさせない冷たさで彼女は注意をする。


「貴方、そんな迂闊に私との関係を口にしたら正体ばれるわよ。」

「あ、ほんとだ。」


彼のおどけたような口調が廊下に小さく響く。

そんな優しい話の余韻を断ち切って、リクは低く小さな声を紡ぐ。


「お前の育ったメノウの開発ビルに、昨日侵入者が入ったらしいぞ」

突然の話でも、何の話か分かったスズランは体を強張らせて、淡い金髪の男を見上げる。


「良かったな、捕まっていないぞ。」

明らかに安堵を浮かべる金の瞳に、リクも口元を緩める。


長く息を吐いて彼女は薄く笑った。

「貴方も情報早いわね…。」


誰もいない寒い廊下に、二人の小さな声だけが響き渡る。


「だろう?

そこらの同業者とは格が違うんだよ。


何て言ったって、俺はお前とこの業界での1と2位を争うんだからな。」

自慢げに腰に手を当てて笑う。


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