空色の瞳にキスを。
「ここが…ルイス?」

屋上から見える街並みを一望しながらアズキが溢した。


冬の冷たい風が4人の髪を巻き上げる。

風が吹いてくる方を見渡せば、色とりどりの豆粒のような家々。


「そう。

それからここは、あたしの友達のお屋敷。」


足元の煉瓦に目を落として、ファイの姿をしたナナセが呟いた。


黒い髪がふわりとなびく様子を、トーヤは目の端でとらえながら口を開いた。

「ここが…」

トーヤの声が空気に消えるのどちらが早いか、屋敷の中へと繋がる扉が開く音がした。


あまりにも大きな音で開くから、ファイやアズキ、トーヤは音のした方を振り返り身構える。

姿がはっきり分かると、ファイは躊躇いなく走り出した。


扉を開けるまでの足音が聞き慣れたもので、ルグィンは体の力を抜いたまま、ゆっくりと扉を振り返った。

見覚えのある栗色に、黒猫の瞳の力が微かに抜けた。


栗色の髪の彼女は、駆けてくる黒髪の少女に両手を広げる。

「ファイ!」

響き渡る感極まったような高いその声。


「スズラン!!」

嬉しそうな声をあげて、ファイは彼女の胸へと飛び込んだ。


「おかえり…。」


そう言ってスズランは彼女の胸へ顔を埋める銀髪を優しく撫でる。


その暖かさが、堪らなくて。


「ただいま…。」


泣きそうな声しか出せなかった。

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