空色の瞳にキスを。
朝の空気は身に染みる。
着替えを済ませて、暖炉に火を入れる。
今の時間はスズランの屋敷に来ている色々なお客さんの朝ごはんの時間。
外は忙しいようなので、二人は部屋で暖をとる。
椅子に腰かけてゆったりしていると、廊下をパタパタと走る音が落ち着いてきた。
随分前に淹れていたお茶が冷めて、アズキがそれを飲み終わる頃、小さなノックの音がした。
「起きてる?
私とルグィンとトーヤさんよ。」
今までの声より少しだけ元気な声で返事をして、鍵をかけていた扉へ銀の少女が駆け寄る。
「おはよう。」
誰からともなく挨拶を口にして、スズランたちを部屋へと招き入れる。
彼女たちが押して来たのは温かい朝食の乗ったカート。
それを見て、明らかにアズキの目が輝く。
「モココシのスープだ!」
アズキの熱い視線の注がれた黄色い穀物の入った優しい味のスープの他にも、色々な種類の料理が並べられる。
それぞれの量はそんなに多くないけれど、品数が多くて庶民の二人は目を丸くする。
「そう言えばアズキ、よくこのスープはよくエリさんにせがんでたね。」
真ん中にある大きなテーブルに朝食を並べながら、ナナセは思い出す。
カートの上のパンをそれぞれの皿に配りながら、スズランがアズキに笑いかける。
「何?
アズキさんの好物なの?
良かったわ。
しっかり食べてね。
今日から二人の特訓を始めるんだから。」
裏表のないいつものスズランの強い瞳。
それを見た銀髪の少女は手を止めて淡い青の瞳を獅子の少女へと向ける。
強い瞳じゃなくて、優しい空色に染まった彼女の瞳。
穏やかな瞳が獅子を見る。
唇は上がっているわけでもなくて、下がっているわけでもない。
噛み締めるような、そんな形。
ナナセが自分を見るその視線と不思議な表情に気付いたスズランが、首をかしげる。
「何よ。」
ちょっとだけ昨日よりもつんけんしたような、そんな口調がナナセの耳を震わせる。
「ううん。
昨日よりも今日の方が、ずっとスズランらしいね。
昨日のすましたスズランより、今日の方が安心する。」
首をゆっくりと横に振って、ふわりと笑う少女に彼女は動けず言葉を見失う。
「なッ…。」
漏れた声はいつもの強い声。
おしとやかな振る舞いはどこかへと消えて。
「ナナセ!」
呼び声は強さを持った少し低くて艶やかな、いつものもの。
着替えを済ませて、暖炉に火を入れる。
今の時間はスズランの屋敷に来ている色々なお客さんの朝ごはんの時間。
外は忙しいようなので、二人は部屋で暖をとる。
椅子に腰かけてゆったりしていると、廊下をパタパタと走る音が落ち着いてきた。
随分前に淹れていたお茶が冷めて、アズキがそれを飲み終わる頃、小さなノックの音がした。
「起きてる?
私とルグィンとトーヤさんよ。」
今までの声より少しだけ元気な声で返事をして、鍵をかけていた扉へ銀の少女が駆け寄る。
「おはよう。」
誰からともなく挨拶を口にして、スズランたちを部屋へと招き入れる。
彼女たちが押して来たのは温かい朝食の乗ったカート。
それを見て、明らかにアズキの目が輝く。
「モココシのスープだ!」
アズキの熱い視線の注がれた黄色い穀物の入った優しい味のスープの他にも、色々な種類の料理が並べられる。
それぞれの量はそんなに多くないけれど、品数が多くて庶民の二人は目を丸くする。
「そう言えばアズキ、よくこのスープはよくエリさんにせがんでたね。」
真ん中にある大きなテーブルに朝食を並べながら、ナナセは思い出す。
カートの上のパンをそれぞれの皿に配りながら、スズランがアズキに笑いかける。
「何?
アズキさんの好物なの?
良かったわ。
しっかり食べてね。
今日から二人の特訓を始めるんだから。」
裏表のないいつものスズランの強い瞳。
それを見た銀髪の少女は手を止めて淡い青の瞳を獅子の少女へと向ける。
強い瞳じゃなくて、優しい空色に染まった彼女の瞳。
穏やかな瞳が獅子を見る。
唇は上がっているわけでもなくて、下がっているわけでもない。
噛み締めるような、そんな形。
ナナセが自分を見るその視線と不思議な表情に気付いたスズランが、首をかしげる。
「何よ。」
ちょっとだけ昨日よりもつんけんしたような、そんな口調がナナセの耳を震わせる。
「ううん。
昨日よりも今日の方が、ずっとスズランらしいね。
昨日のすましたスズランより、今日の方が安心する。」
首をゆっくりと横に振って、ふわりと笑う少女に彼女は動けず言葉を見失う。
「なッ…。」
漏れた声はいつもの強い声。
おしとやかな振る舞いはどこかへと消えて。
「ナナセ!」
呼び声は強さを持った少し低くて艶やかな、いつものもの。