空色の瞳にキスを。
ファイの左腕のすぐ脇に、ルグィンの細くて長い手が差し出される。
「手…?」
怪訝そうなファイの声が隣から聞こえても、黒髪の少年はコートのポケットから出した手を引っ込めない。
「お前、一人じゃ危ない。
だから、手を貸せよ。」
いつもより言葉足らずなのは、緊張しているからだなんてことも、恋愛沙汰に疎い少女は気付かない。
「え、あ…。」
どうすればいいのか迷った挙げ句、彼女は左手を中に浮かばせて、視線を泳がせている。
「ほら。」
面倒臭そうな物言いも、照れ隠し。
ファイからはフードを深く被ったルグィンの表情は窺い知れない。
今はこちらを向いてほしくて見上げているのに、彼はこちらを向いてくれない。
自分に差し出された手を見つめて自分の手をどうしようか迷っていると、血が上って来るのが分かった。
自分がなんで真っ赤になっているのかも分からずに、頬を染めて涙目になる彼女。
─どうしよう。
─どうしよう。
─なにこれ、すごく…
「…って、おい前!」
「え、きゃ!?」
ルグィンが咄嗟に浮いていた彼女の手を素早く引いて、人にぶつかるのを阻止する。
「危ね…。」
ほっとした声が降ってきて。
ファイはまた人にぶつかりそうだったのか、とやっと感じる。
周囲への注意を疎かにしていた自分を反省して、自分の今の状況をまた思い出す。
そのまま彼が歩き出したから、さっき少年の話題に上がった手は今は下ろされていて、距離が近いから触れたり離れたりする。
視線に気づいたらしい黒髪の少年が、彼女にもう一度言う。
「手、貸せ。」
ぽつりと不機嫌な声で紡がれたそれにまたファイが口を引き結んで頬を染める。
目深に被った帽子で、口元やらが隠れていて、ファイはどういう心境でいっているのか分からなくて戸惑う。
俯いてしまった彼女の左手を、少年は無理やり掴む。
「余所見されたら困るから。」
手を加減された強さで引いて、自分の方へと彼女を寄せて、少しきつい口調でルグィンは言葉を重ねた。
「手…?」
怪訝そうなファイの声が隣から聞こえても、黒髪の少年はコートのポケットから出した手を引っ込めない。
「お前、一人じゃ危ない。
だから、手を貸せよ。」
いつもより言葉足らずなのは、緊張しているからだなんてことも、恋愛沙汰に疎い少女は気付かない。
「え、あ…。」
どうすればいいのか迷った挙げ句、彼女は左手を中に浮かばせて、視線を泳がせている。
「ほら。」
面倒臭そうな物言いも、照れ隠し。
ファイからはフードを深く被ったルグィンの表情は窺い知れない。
今はこちらを向いてほしくて見上げているのに、彼はこちらを向いてくれない。
自分に差し出された手を見つめて自分の手をどうしようか迷っていると、血が上って来るのが分かった。
自分がなんで真っ赤になっているのかも分からずに、頬を染めて涙目になる彼女。
─どうしよう。
─どうしよう。
─なにこれ、すごく…
「…って、おい前!」
「え、きゃ!?」
ルグィンが咄嗟に浮いていた彼女の手を素早く引いて、人にぶつかるのを阻止する。
「危ね…。」
ほっとした声が降ってきて。
ファイはまた人にぶつかりそうだったのか、とやっと感じる。
周囲への注意を疎かにしていた自分を反省して、自分の今の状況をまた思い出す。
そのまま彼が歩き出したから、さっき少年の話題に上がった手は今は下ろされていて、距離が近いから触れたり離れたりする。
視線に気づいたらしい黒髪の少年が、彼女にもう一度言う。
「手、貸せ。」
ぽつりと不機嫌な声で紡がれたそれにまたファイが口を引き結んで頬を染める。
目深に被った帽子で、口元やらが隠れていて、ファイはどういう心境でいっているのか分からなくて戸惑う。
俯いてしまった彼女の左手を、少年は無理やり掴む。
「余所見されたら困るから。」
手を加減された強さで引いて、自分の方へと彼女を寄せて、少しきつい口調でルグィンは言葉を重ねた。