空色の瞳にキスを。
年越し前日の昼下がり。

ナナセが使うお馴染みの部屋に、いつものように皆が集まってくる。

ちゃっかり暖炉前の特等席の椅子に座って暖まるアズキ。
獅子の少女が選んでくれた、暖かそうだけど可愛いスカートや羽織があっても、やっぱり暖炉の暖かさには負ける。
手を暖炉の前へと差し出して、芯からゆっくり体を温める。

木目の美しい大きな机を囲んだ椅子のひとつに座ったトーヤを振り返った。

「昼まで何してたの?」

「俺はまたあの訓練室で修行。
ルグィンが付き合ってくれて。

アズキは?」

「私?

スズランとドレス決めてたよ!
スズラン最後までこだわるから大変だったよ~。」

アズキが明るい茶色の髪を揺らし笑いながらため息をつく。

「ナナセも一緒だったのか?」

「そうだよ…あれ、ナナセは?
スズランもいない。」

トーヤに問われて、ナナセがこの部屋にいないことに気付く。
アズキはキョロキョロと辺りを見回す。

珍しいこともあるなと、アズキは首をかしげた。
いつも早くに来て、この部屋に集まる自分達を彼女は笑顔で迎えてくれるのに。

「ルグィンー、ナナセ知らない?」

トーヤが窓際にもたれるルグィンに視線をやれば、彼は閉じていた目を薄く開いてポツリと呟く。


「知らね。

…屋敷にはいるぞ。匂いがする。」

それだけ言うと、腕組みをしてまた目を閉じてしまう。

「ふーん…。」

それ以上答えを聞けそうになくて、トーヤはおとなしく引き下がる。

かたん、と音を立てて中へ入ってくる金髪の男。

「お、皆さん集まっているんですね。」

扉を鍵の魔術できちんと閉めて、くるりと綺麗に振り返って完璧な笑顔を浮かべるのは。


「え、リクさん?」

忙しい時でもきちんとした服装をした貴族のような印象を抱かせる青年。
白いマントをするりと肩から下ろその仕草も優雅で。

「スズランじゃなかった…。」

そんな言葉まで声に出してがくり、と項垂れるトーヤ。

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