空色の瞳にキスを。
時計塔から響く歌声は、階段を上るごとに大きくなっていく。
同時に物悲しく切なくなっていく。
高く澄んだ声に導かれて、時計塔の内側の最上階まで来てしまった。
しかし窓の微かな光だけで誰もいない。
しかも最上階にいる今が、一番近くに二人に声が聞こえる。
高くて切ない、少女の歌声だった。
少し怖くて、トーヤはまた帰ろうと促したが、目の前を歩くアズキは、ぼんやりと平気と返して耳を澄ませる。
「外から響いてる?
確か、外には煉瓦の屋根が……。」
独り言のように呟いたアズキは光の入る開けられない窓とは別に、時計職人が使う屋根へと出られる扉を手探りで探し始める。
アズキを置いていけない少年も諦めて探し始める。
「こっちだ!」
小さく鋭い声をあげたトーヤのもとへアズキが向かうと、木製で古いが頑丈そうな手触りのする扉があった。
扉に二人で耳をつけると、綺麗な歌がひときわ大きな声で流れてくる。
遠くで聞いていて分からなかったが、時々小さく鼻を啜る音がする。
息を潜めた二人は暗闇のなかで目を合わせて、息を整え確認をとる。
そして、一気に扉を引いた。
歌が止まって、二人の視界に映ったのは、夜のリョウオウの街と目を奪われるほどの月光に輝く、銀。
月に輝く銀色に視界を奪われたのは、一瞬のこと。
「……だ、だれ。」
そんな歌声の主の声が聞こえたときには、もう違っていた。
黒が、綺麗な少女だった。
ただの光の反射だったらしい。
ぱちん、と黒髪の少女の指が鳴った。
その音にアズキは深い思索の底から現実へと引き戻される。
少女が手にした魔術の光でぽうっと三人は照らされた。
その動作で魔術師だったのかと知らされる。
「あ!あんた……ハルカだ!」
トーヤが照らし出された少女の顔を見て驚いたような声をあげる。
「あ、君はあのときのトーヤね!」
嬉しそうに顔を輝かせる探していたこの少女は、自分と本当に年の近そうな顔立ちだった。
もしかしたら年上かも知れないと、思った。
どうしていなくなったとトーヤが問えば、よそ見をしていたら見失ったとなんとも気の抜けた答えだった。
ハルカ、と呼ばれたこの少女はこの街の一番大きな時計の下のレンガ造りの屋根に、座っている。
どこにでもある黒い髪に光に照らされた茶の瞳が、何故か印象的な彼女。
光を吸い込むような、明るいのに深い茶色の眼差しが、トーヤの隣に移った。
「あら、あなたは?」
「トーヤの幼馴染みの、ソライ・アズキよ。」
「アズキね、よろしく。」
「よろしく!」
扉から身を乗り出してハルカに声をかけるアズキ。
そんな彼女を見て自分の隣をぽんぽん、と叩いてこちらへ誘う。
「大丈夫よ。落ちたりしないから。」
その声に安心してアズキは夜の闇が包む屋根へと出る。
隣へ腰を下ろしながら、アズキは尋ねる。
「歌、上手いのね。教会の下まで聞こえてきちゃった。」
笑顔でいうアズキの言葉に、目を丸くしてちょっと驚くハルカに、アズキはここまで来た経緯を話し出す。
同時に物悲しく切なくなっていく。
高く澄んだ声に導かれて、時計塔の内側の最上階まで来てしまった。
しかし窓の微かな光だけで誰もいない。
しかも最上階にいる今が、一番近くに二人に声が聞こえる。
高くて切ない、少女の歌声だった。
少し怖くて、トーヤはまた帰ろうと促したが、目の前を歩くアズキは、ぼんやりと平気と返して耳を澄ませる。
「外から響いてる?
確か、外には煉瓦の屋根が……。」
独り言のように呟いたアズキは光の入る開けられない窓とは別に、時計職人が使う屋根へと出られる扉を手探りで探し始める。
アズキを置いていけない少年も諦めて探し始める。
「こっちだ!」
小さく鋭い声をあげたトーヤのもとへアズキが向かうと、木製で古いが頑丈そうな手触りのする扉があった。
扉に二人で耳をつけると、綺麗な歌がひときわ大きな声で流れてくる。
遠くで聞いていて分からなかったが、時々小さく鼻を啜る音がする。
息を潜めた二人は暗闇のなかで目を合わせて、息を整え確認をとる。
そして、一気に扉を引いた。
歌が止まって、二人の視界に映ったのは、夜のリョウオウの街と目を奪われるほどの月光に輝く、銀。
月に輝く銀色に視界を奪われたのは、一瞬のこと。
「……だ、だれ。」
そんな歌声の主の声が聞こえたときには、もう違っていた。
黒が、綺麗な少女だった。
ただの光の反射だったらしい。
ぱちん、と黒髪の少女の指が鳴った。
その音にアズキは深い思索の底から現実へと引き戻される。
少女が手にした魔術の光でぽうっと三人は照らされた。
その動作で魔術師だったのかと知らされる。
「あ!あんた……ハルカだ!」
トーヤが照らし出された少女の顔を見て驚いたような声をあげる。
「あ、君はあのときのトーヤね!」
嬉しそうに顔を輝かせる探していたこの少女は、自分と本当に年の近そうな顔立ちだった。
もしかしたら年上かも知れないと、思った。
どうしていなくなったとトーヤが問えば、よそ見をしていたら見失ったとなんとも気の抜けた答えだった。
ハルカ、と呼ばれたこの少女はこの街の一番大きな時計の下のレンガ造りの屋根に、座っている。
どこにでもある黒い髪に光に照らされた茶の瞳が、何故か印象的な彼女。
光を吸い込むような、明るいのに深い茶色の眼差しが、トーヤの隣に移った。
「あら、あなたは?」
「トーヤの幼馴染みの、ソライ・アズキよ。」
「アズキね、よろしく。」
「よろしく!」
扉から身を乗り出してハルカに声をかけるアズキ。
そんな彼女を見て自分の隣をぽんぽん、と叩いてこちらへ誘う。
「大丈夫よ。落ちたりしないから。」
その声に安心してアズキは夜の闇が包む屋根へと出る。
隣へ腰を下ろしながら、アズキは尋ねる。
「歌、上手いのね。教会の下まで聞こえてきちゃった。」
笑顔でいうアズキの言葉に、目を丸くしてちょっと驚くハルカに、アズキはここまで来た経緯を話し出す。