空色の瞳にキスを。
ナナセの鼻を啜る音が止んで、落ち着いてきた頃。
アズキがそっと身動ぎをすると、静かな部屋に衣擦れのそれはやけに響いて。
アズキの瞳は薄青いその瞳に捉えられる。
うっすら赤い目に見つめられて、アズキは先程までの様子を見ていたことから動揺する。
布団から出たその茶色い瞳の揺らぎに、ナナセは困ったように苦笑する。
「おはよう、アズキ。」
銀髪を揺らして表情を和らげた少女に、アズキはどきりとした。
銀髪のお陰以上に、いつもよりもっと淡く、ひどく儚い笑顔を見せたから。
儚さは一瞬のことではなくて、答えを返さないアズキを不思議そうに見つめる今でさえ。
「…おは、よ、」
やっと絞り出せた声はそんな弱い掠れ声だった。
また空色の瞳で淡く、ふわりと笑って、ベッドから起き上がる。
長くなった淡い銀色が茶髪の少女の視界に、眩しさの中鮮やかな残像を残して。
綺麗だと思う前に、アズキには悲しさが襲ってきた。
遠くなる白いワンピースを着た彼女は、裾をなびかせて部屋の奥へと消えていく。
その背中があんまりにも危なげに見えて、先見の少女はどこからともない不安に襲われる。
冷たい絨毯に足をつけると、彼女の銀が消えた先に自然と彼女の足が向かう。
奥の部屋へと走り込んだ彼女がどうしても心配になったアズキは、薄い寝着のままでナナセが消えた半開きの扉へとそろりそろりと足を向ける。
窓から差し込む光の中で、銀の少女は着替えを済ませる。
そっと覗いた先見の少女に一瞬見えた、白くて綺麗な肌。
その象牙色の背中の中ほどにかけてまわりと色が違う刀傷が見えて、アズキの肌はぞわりと粟立つ。
目の前で背を向けて着替る華奢な彼女は、白いブラウスに膝丈の淡い色をしたスカート、その上からカーディガンを羽織る。
ナナセが背後からの視線を感じて、彼女がくるりと振り返る。
大きく見開かれた瞳、ぐらり、動揺する様子に、ナナセは口許を緩める。
「─あ、見えた?
昔、逃げ切れなくて。」
困ったように笑うその様子から、見てはいけなかったものかとアズキは後悔の念を覚える。
扉の隅をぎゅ、と握りしめる彼女その様子に、ナナセはまた淡く微笑んで。
「別に、恥ずかしくて見せたくなかっただけだよ。」
その彼女の台詞に、意外そうに茶髪を揺らして首をかしげる。
「そうなんだ…。
もう、痛くはないの?」
おずおずと小さな声での心配は、ナナセの笑みで和らげられる。
「うん、本当に昔のことだもの。」
振り返り銀を揺らして笑うその様子に、やっとアズキも笑う。
笑いあったのに、どこか悲しいのは、何故。
いつの間にか彼女が手前の部屋の暖炉におこした炎は、白銀の彼女みたいに頼りなげに揺れていた。
アズキがそっと身動ぎをすると、静かな部屋に衣擦れのそれはやけに響いて。
アズキの瞳は薄青いその瞳に捉えられる。
うっすら赤い目に見つめられて、アズキは先程までの様子を見ていたことから動揺する。
布団から出たその茶色い瞳の揺らぎに、ナナセは困ったように苦笑する。
「おはよう、アズキ。」
銀髪を揺らして表情を和らげた少女に、アズキはどきりとした。
銀髪のお陰以上に、いつもよりもっと淡く、ひどく儚い笑顔を見せたから。
儚さは一瞬のことではなくて、答えを返さないアズキを不思議そうに見つめる今でさえ。
「…おは、よ、」
やっと絞り出せた声はそんな弱い掠れ声だった。
また空色の瞳で淡く、ふわりと笑って、ベッドから起き上がる。
長くなった淡い銀色が茶髪の少女の視界に、眩しさの中鮮やかな残像を残して。
綺麗だと思う前に、アズキには悲しさが襲ってきた。
遠くなる白いワンピースを着た彼女は、裾をなびかせて部屋の奥へと消えていく。
その背中があんまりにも危なげに見えて、先見の少女はどこからともない不安に襲われる。
冷たい絨毯に足をつけると、彼女の銀が消えた先に自然と彼女の足が向かう。
奥の部屋へと走り込んだ彼女がどうしても心配になったアズキは、薄い寝着のままでナナセが消えた半開きの扉へとそろりそろりと足を向ける。
窓から差し込む光の中で、銀の少女は着替えを済ませる。
そっと覗いた先見の少女に一瞬見えた、白くて綺麗な肌。
その象牙色の背中の中ほどにかけてまわりと色が違う刀傷が見えて、アズキの肌はぞわりと粟立つ。
目の前で背を向けて着替る華奢な彼女は、白いブラウスに膝丈の淡い色をしたスカート、その上からカーディガンを羽織る。
ナナセが背後からの視線を感じて、彼女がくるりと振り返る。
大きく見開かれた瞳、ぐらり、動揺する様子に、ナナセは口許を緩める。
「─あ、見えた?
昔、逃げ切れなくて。」
困ったように笑うその様子から、見てはいけなかったものかとアズキは後悔の念を覚える。
扉の隅をぎゅ、と握りしめる彼女その様子に、ナナセはまた淡く微笑んで。
「別に、恥ずかしくて見せたくなかっただけだよ。」
その彼女の台詞に、意外そうに茶髪を揺らして首をかしげる。
「そうなんだ…。
もう、痛くはないの?」
おずおずと小さな声での心配は、ナナセの笑みで和らげられる。
「うん、本当に昔のことだもの。」
振り返り銀を揺らして笑うその様子に、やっとアズキも笑う。
笑いあったのに、どこか悲しいのは、何故。
いつの間にか彼女が手前の部屋の暖炉におこした炎は、白銀の彼女みたいに頼りなげに揺れていた。