空色の瞳にキスを。
彼女がただ武が好きな貴族令嬢であるうちにひとつ、その生活を13歳で終えた後に5ヶ月と1年こす大きな戦がふたつあった。

5ヵ月に渡った戦の後、ナコ達を置いて、なりふり構わず逃げ出したほどにその戦は酷かった。しかし軍は許してくれず、引き戻されたのだが。
戦が嫌いで逃げ出したのに、逃げられたと思った戦争に脅しをかけられて最前線に立たされたのだ。
─または、人外の自分達を歴史から消し去るために。


今はルイの属国である小さな国を占領するために2回の戦を。
ダムニーという国を攻めるのに1年の戦を、国に強いられた。
確かに小さい国のままでいいのかという声は国内にもなかったとは言えないが、国民の大多数は今の豊かな暮らしに満足していたのだ。ダムニーとの戦には人手が足りなくなり始めたらしく、国はあろうことか一般人を駆り出し始めた。

王は不満なんて聞く耳を持たない。独裁者は反乱を押さえつけ一般人を送り出し、ぎりぎりで勝ちをおさめた。

その後国内は戦争に勝って得た賠償金で綺麗になった。戦時中の荒れた雰囲気は薄くなった。けれど、まだ自分の心にあの時のことは鮮やかに刻み付けられそこだけ時が止まったよう。

戦いから2年程疎遠になっているこの国の穏やかさは、獅子の彼女にとっては嵐の前の静けさのように思えてならない。

次はまた春に、戦わなければならない。春の戦いのための静けさなのかと、スズランは苦笑した。

─否応なしに、異の姿と力のせいでその渦中にいてしまう自分。

それが嫌で逃げたのに、渦が自分に寄って来るみたいに。


少女は転がした羽ペンがざらついた紙にインクの染みを作るのをぼんやりと眺めた。


「けれど、これが上手くいけば、これで最後──。」


─私も、あの子も、あの人も。



─同じ世界で笑えるわ―。



強くて眩しい銀髪の王女みたいに、彼女が動くのは民のためなんかじゃない。


彼女自身の為なのだ。



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第2章、第3章改稿のため、ページ数が減少しています。
2014/12/28
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