空色の瞳にキスを。
「トーヤ!」
「俺は……もうお前が正しいか分からない。どれが正しい答えか分からない。」
ふたりの少女の怪訝な顔を前に、トーヤがうつむく。
「俺は、王女の悪い話しか聞いて来なかったから。いくらナナセ王女がハルカでも、すぐには信じられない。」
まだ窓に座るナナセは、トーヤの眼から視線を逃がした。話を聞いていたアズキはトーヤにまた何かを言おうとしたが、ナナセが口を開いた。
「全部信じて欲しいけど、信じてくれてることは誰にも言っちゃ駄目だよ。」
さぁ、と雲が流れて一瞬月の顔を見せる。背中に月を背負ったナナセは、少し顔を上げた。
「どこからか噂が漏れて、きっとあなたたち二人が首狩りに追われることになるわよ。賞金首の関係者として。
──それだけはあたし、嫌だよ。」
銀の髪と青い瞳が、光を受けた刃のように鋭く光った。ふたりは我知らずごくりと唾を飲み込んだ。
「首狩り……。」
「そう、首狩り。
あたしの話を信用していても、していなくても、関わった人を危険と見なしてくるわ。」
ナナセの話を聞いて、ぐっと体が強ばる。
「……わかった。俺たち三人の秘密な。」
目と目で誓い合うと、誰からともなく視線を外した。
また間を置いて、ナナセがそっと言葉を溢した。
「この町に来てからはあなたたちにしか喋っていないわ。」
「前の町では話したの?」
「最初の町で、一人だけに……ね。」
アズキの問いに答えたナナセの伏せた瞳がいつになく鋭くて。アズキはそれ以上問うのをやめた。
「だからあたしの話はほとんどの人が知らないの。」
ナナセはその瞳のままに言葉を続ける。
「じゃあ、お母さんお父さんには言っちゃだめなの?きっと、分かってくれるはずだよ。」
ナナセがぱっと顔をあげて、アズキの方を見た。数瞬迷って、彼女は言いにくそうに口を開いた。
「本当は言いたくない。噂がどこかから漏れると歯止めが効かなくなるから。だからこの話を知る人は、できるだけ少ない方がいい。」
「そっか……。」
ナナセの言い分にも一理あり、アズキは俯いた。
「でももし、秘密を守ってくれる自信があるなら、教えてもいいよ。まだ知り合ってから少ししか経っていないけど、コルタさんたちなら……いいよ。」
アズキとトーヤが驚いてナナセを見る。自分の運命にも関わるかも知れないようなことを、彼女はふたりに委ねたのだ。普段では出来ないことをする気になったのは、ふたりが自分に賭けてくれたから。
「いいのか……?」
トーヤの声が躊躇いを含んでいた。
「……いいよ。」
憂いを秘めた瞳がゆっくりと少年を見た。
「ナナセ。本当に……いいの?」
「うん。──おじさんたちを、信じてる。」
「俺は……もうお前が正しいか分からない。どれが正しい答えか分からない。」
ふたりの少女の怪訝な顔を前に、トーヤがうつむく。
「俺は、王女の悪い話しか聞いて来なかったから。いくらナナセ王女がハルカでも、すぐには信じられない。」
まだ窓に座るナナセは、トーヤの眼から視線を逃がした。話を聞いていたアズキはトーヤにまた何かを言おうとしたが、ナナセが口を開いた。
「全部信じて欲しいけど、信じてくれてることは誰にも言っちゃ駄目だよ。」
さぁ、と雲が流れて一瞬月の顔を見せる。背中に月を背負ったナナセは、少し顔を上げた。
「どこからか噂が漏れて、きっとあなたたち二人が首狩りに追われることになるわよ。賞金首の関係者として。
──それだけはあたし、嫌だよ。」
銀の髪と青い瞳が、光を受けた刃のように鋭く光った。ふたりは我知らずごくりと唾を飲み込んだ。
「首狩り……。」
「そう、首狩り。
あたしの話を信用していても、していなくても、関わった人を危険と見なしてくるわ。」
ナナセの話を聞いて、ぐっと体が強ばる。
「……わかった。俺たち三人の秘密な。」
目と目で誓い合うと、誰からともなく視線を外した。
また間を置いて、ナナセがそっと言葉を溢した。
「この町に来てからはあなたたちにしか喋っていないわ。」
「前の町では話したの?」
「最初の町で、一人だけに……ね。」
アズキの問いに答えたナナセの伏せた瞳がいつになく鋭くて。アズキはそれ以上問うのをやめた。
「だからあたしの話はほとんどの人が知らないの。」
ナナセはその瞳のままに言葉を続ける。
「じゃあ、お母さんお父さんには言っちゃだめなの?きっと、分かってくれるはずだよ。」
ナナセがぱっと顔をあげて、アズキの方を見た。数瞬迷って、彼女は言いにくそうに口を開いた。
「本当は言いたくない。噂がどこかから漏れると歯止めが効かなくなるから。だからこの話を知る人は、できるだけ少ない方がいい。」
「そっか……。」
ナナセの言い分にも一理あり、アズキは俯いた。
「でももし、秘密を守ってくれる自信があるなら、教えてもいいよ。まだ知り合ってから少ししか経っていないけど、コルタさんたちなら……いいよ。」
アズキとトーヤが驚いてナナセを見る。自分の運命にも関わるかも知れないようなことを、彼女はふたりに委ねたのだ。普段では出来ないことをする気になったのは、ふたりが自分に賭けてくれたから。
「いいのか……?」
トーヤの声が躊躇いを含んでいた。
「……いいよ。」
憂いを秘めた瞳がゆっくりと少年を見た。
「ナナセ。本当に……いいの?」
「うん。──おじさんたちを、信じてる。」