空色の瞳にキスを。
次の日の朝から、ナナセの叫び声が屋敷から響く。

ナナセの叫び声に、屋敷の屋根の小鳥が飛び立つ。

「キャー！」


ナナセの部屋から響くその声に、サシガネとトキワが部屋に駆けつける。

「どうした！」

バタバタと駆け寄ってくる二人の目に映ったのは、彼女の部屋の扉にもたれる黒猫。


「…黒猫…。」

ルグィンは二人を映した瞳を伏せて、溜め息を吐く。


「着替え。」

そんなルグィンの言葉に、二人が構えていた肩を落とす。


「ユリナちゃんには何もなかったんだな…。」

トキワがほっとしたように言う。

そんな三人をよそに、乱闘が聞こえてくる。

「きゃあぁぁ！」

「そんな声出さないで！
私が強姦してるみたいじゃないの！」

「スズラン、ちょっと…くすぐった…。」

「じっとしなさい！」


鍵の魔法をかけていない扉の向こう側からそんな声から聞こえてくる。

どうやらナナセが何かに抵抗しているようで、どたばたと物音も聞こえてくる。


しばらくすると声がやんで、戸が開いた。


開いた扉から押し出されてきたのは銀色の彼女。

「きゃっ。」

つんのめるように廊下へと飛び出してきたナナセ。

床にある足の数を見てユリナへと変わらないといけないことを悟る。


「ねぇ、スズラン…。」

下を向いたまま助けを求める。

「もう、なんで顔をあげないの！」

後ろから苛立った声が聞こえた。

「だって、この格好恥ずかしい…。」

照れたように呟いてスズランに文句を言うために渋々顔をあげる。

目の前にはルグィンがいて。

恐る恐る視線を合わせて、ちょっと笑ってみる。


「変だよね…。」

そう聞かれたルグィンが、戸惑う。


―まさか。

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