【BL】俺がお前にできること
「ヒナは僕の憧れだったんです」
今は、憧れだけじゃ埋めきれないんだけどね。
「さっきも思ったけど、弥生くんは陽向のこと“ヒナ”って呼ぶのね」
「はい」
「陽向はそれを許してるの?」
「……? はい、何も言われたことないです」
この質問の真意がわからなくて首を傾げながら答える。
そんな僕に
叶笑さんは暫く考え込んでから「そっかぁ」とだけ言った。
そして、そのあとに
叶笑さんは呟いた。
「可哀想に」と。
「……え?」とただ漠然とする僕にさらに追い討ちをかける。
「何も知らないんだ、弥生くん。じゃあ、あたしと陽向のことも知らないんだね」
――……叶笑さんとの数分の会話が苦痛で仕方なかった。
あぁ、ヒナ。
早く帰ってきてよ。
早く僕のもとへきて「弥生」って呼んで
抱き締めてよ。