【BL】俺がお前にできること
さっきヒナは言った。
父親同士が仲がいいだけなのだと。
きっと、それは嘘ではない。
だけど、それ以上は
僕が入ってくる領域ではないってことで
僕には、関係のないことだと判断したの、かな。
強く僕を抱き締める腕が離れていって
「またね」と離れていくヒナ。
「ヒナ……っ!」
「ん?」
「……僕も、好……なんでもない、気を付けて」
きっと前半が聞こえてないであろうヒナは
その言葉を聞くと来た道を戻っていった。
途中で振り返るかなあ……とか思ったけれど、一度も君は振り向かなかった。
あぁ……待ってよ。
また君は何も言わず、僕から離れていくの?
なんで、好きとか今さら言うの。
なんで、恋人になることを望んでくれたの。
その理由に、僕が追いかけてきたからっていうのが含まれるなら……僕は会いたいって気持ちに任せて君を追いかけなければ良かった。
もう一年も一緒に、いられない。
ヒナがもし、僕の想いに流されただけならば
そこにはヒナの気持ちはないわけで。
「……やっと僕のものになったのに」
もうすぐ夏休み。
それなのに、肩がぶるりと震えた。