【BL】俺がお前にできること




「…ところで、剛先輩たちはいないの?」



「あー、きっと視聴覚室だろうね。あそこクーラーかかってて涼しいから」




中学1年の、9月のある日だった。



「僕たちも移動する?」



「なんで?」



「だって暑いでしょ……ヒナが」




僕は暑がりなわけでもないから、いいのだけどヒナが熱中症にでもなったら困るしね。


数学の教科書を見ながら
次にヒナが何て言うのか耳を澄ます。



すると、優しく笑う音が聞こえた。



「嫌だね。せっかく二人きりにしてもらったんだ。暑くても平気」




…二人きりに“してもらった”?


どうして、そんなこと…





「ど、どうして?」



「わかんない?どうしてなのか」



ヒナを見上げたら、首を傾げながら逆に問い返されて、その意味することが何となく分かって俯いた。




本当はお互いがお互いの気持ちを理解してる、そんな予感がするんだ。



ヒナも僕とおんなじ気持ちでいてくれたら、いいな…




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