【BL】俺がお前にできること
一気に階段を駆け上って
屋上の扉を開けば「遅かったな」と柔らかな声で俺に声をかけているのであろう好きな人。
だけど、さっきの剛さんの告白が耳から離れないし……舐められた手や触られた感触がまだ残ってるし……
ねぇ、郁馬。
俺は郁馬の恋人だと誇れるほどの人になれてるのかな。
…自信がもてないんだ。
こんなにも、郁馬からたくさん貰ってるっていうのに。
剛さんの言った“同情”に想像以上に、傷付いたんだ。
郁馬の顔も見ずに、衝動的に真正面から抱きしめた。
「翔太?……何があった」
「…っ」
ガクガクと肩からの震えが止まらない。
郁馬に触れても収まらない。
声が出なくて、しゃくり上げる声が響く。
そんな俺を郁馬が
そっと抱きしめ返してくれて、優しく背中を擦られるとゆっくりゆっくりと震えが収まっていった。
問い詰めない優しさが、胸に染みる。