【BL】俺がお前にできること
俯いて何か考えているのだろう弥生の睫毛が揺れる。
そんな弥生を、剛さんはただ見つめていた。
だけど、何かを見てぴくりと眉が動きゆっくり弥生の首に手を伸ばした。
「…ん、…触んないで下さーい、えっちー」
びくっと肩を震わせた弥生だが、負けてたまるかって思いで睨み付けいつもの間延びした声で微笑してみせた。
あぁ、弥生…きっと作り笑いだ。
俺へ向ける笑顔と、まったく違う……
そんな弥生に剛さんも作り笑いで返す。…なんか…――。
「ほんっと……はぁ。つくづく弥生のこと嫌いだって思うよ」
「そう、ですか…。僕は、慕ってましたよ、昔は。それより前に剛先輩が言ってたこと、ようやく分かりました」
「前?…陽向のこと?」
「はい。あれは剛先輩の嫌がらせじゃなくて、優しさだったんですね」
「…」
「ありがとうございます」
…?
二人は何の話をしてるんだろう。
真剣な話なのは確かだから、二人の間には入れないけれど“あの人”がほっておくわけはなかった。