怪盗は静かな夜に出会う
「ところで……あの、」
遠慮がちに静夜が口を開き、月斗は疑問の目を彼女に向ける。
「んだよ?」
困った様に落とした彼女の目線を追うと、互いにまだ繋いだままの手が見えた。
「あっ、……悪い」
「だ、大丈夫」
慌てて離すが、無意識の事だったとはいえ二人で顔を赤くしてしまう。
『おーいお二人さん、監視カメラにばっちり映ってますよー』
「うっせーよ、貴也!」
耳元で聞こえたからかいの言葉に反応して月斗が怒鳴ると、聞こえていない静夜が驚きに目を丸くした。
後日また連絡を取り合う事を決めた月斗は、静夜に案内されて玄関へと向かう。
「狙った家の人間に連れられて玄関から出るなんて変な感じだな」
重厚な扉を開き、門までの長い距離を二人で歩く。
「罠でもあるんじゃないかって思ってる?」
「ま、その辺は大丈夫だろ」
月光を浴びた月斗は余裕の表情でそう答える。
「どうして?」
「んー」
月斗が静夜の目を見る。
「何となく、な」
「答えになってないよ!」
不満を顔に出した彼女に笑ってみせると、門の外に止まっていたバンに駆け寄った。
乗り込む寸前、彼は静夜の方を振り返る。
「またな!シズ!」
「『シズ』?」
彼女が首を傾げている間に、バンは闇のなかへと消えて行った。