怪盗は静かな夜に出会う
車の座席に身を沈めた月斗は深いため息をついた。
「ゲット、本当に彼女の願い聞いちゃうのか?」
隣に座っている貴也がパソコンをいじりながらそう聞く。
月斗は仲間内からは『ゲット』と呼ばれている。
なんでも、その方が呼びやすいらしい。
「……やると言っちまったからな」
「ただ受けただけではなく、考えがあるのでしょう?」
車の運転をしているカルラがそう口をはさむ。
「それは―――ってかカルラ!アンタが改良した胸、さっそくバレたじゃねーか!」
「うーん、やはり女性には分かってしまうのですかねぇ」
悪びれもせず笑っているカルラに、月斗はイライラした目線を投げかける。
「せっかくですから、新しいのを作る時は静夜嬢に手伝ってもらいましようか」
『女性は本物をお持ちですしね』と付け加えるカルラ。
その言葉に月斗がギョッとして目を見張る。
「アンタ、変な事考えてるんじゃねーだろなっ?」
「カルラさん!その時はオレも混ぜて混ぜてっ」
「黙ってろ、このパソコンオタク!」
「ゲットちゃん怖いっ」
ぶりっ子の様に手を口元に揃える貴也に掴みかかる月斗を乗せて、車は彼らが根城にしている場所に向かっていた。