怪盗は静かな夜に出会う


「とりあえず着替えろ。飯出来てるから」

椅子にかけてあったエプロンを腰に巻きながらキッチンに向かう高弘に、カルラが嬉しそうな顔をする。

「今日は何なんだい?考えるだけでお腹が鳴りそうだ!」

「お前は手でも洗ってこい!」

「高弘さん、オレ手伝いますねー」

月斗を除く全員がキッチンに向かって行き、その場には彼だけが残される。



自分にあてがわれた部屋に入った月斗は、目に入った写真立てを手に取る。

幸せな家族の写真。

祖父に抱きしめられている、二人の少年。

「……兄貴」

小さな弟の隣に立つ笑顔の少年を見る彼の目は優しい。

けれど、すぐにその顔に悲しみの影が差す。



写真立てを元に戻すと、月斗はベッドに座り込んで窓の外を見た。

「兄貴、どうしてる?無事なのか?」

月に向かってそう問いかけるが、当然の事ながら返事はない。それは今までに何度も何度も投げかけた問いだった。


 
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