怪盗は静かな夜に出会う
カルラ達と月斗が出会ったのは、ほんの半年程前の事だ。
月斗が19になったばかりの時、彼の祖父は突然の病気でこの世を去った。
絵を描くのが好きで美大に通っていた月斗は、大切な保護者を失って途方にくれた。
月斗には両親がいない。
それというのも幼い頃に家が火事になり、その時祖父宅に遊びに来ていた月斗と彼の兄を残して両親が命を落としてしまったからだ。
幼い二人の兄弟は祖父に引き取られ、十分な愛情をもって育ててもらった。
両親のいない寂しさはあっても、不満はなかった。
ところが祖父の後を継ぎ鑑定士となって修行中だった4つ上の兄が、祖父が亡くなったすぐ後に姿を消した。
月斗は兄の消息を追ううち、兄の失踪とある家の相続が関係している事を知る。
その家の事を調べている時に出会ったのが、高弘とカルラだった。
利害の一致により協力体制をとる事になった彼らに、幼馴染の貴也を加えて怪盗業を始める。
怪盗という目立つ家業を選んだのは、兄の行方を知っていると思われた者達の狙いに先回りする目的と、それにより向こうからの接触を待つという目的からだった。