怪盗は静かな夜に出会う


「―――なっ……、お前っ?」

怪盗の目線が静也の胸元に注がれて、静也も思わず自身の目線を下に向ける。

「……あっ」

破れた服の下から、コルセット状の物に潰された胸が見えてしまっていた。

「い、いやっ!」

静也がはね除ける様に怪盗を突き飛ばすと、虚をつかれた彼は簡単に離れた。

「桐原静也が、……女?」

服をかき抱く様に握りしめ、屈み込んで俯いている姿は女にしか見えない。

「んだよ、人の事言えねえな。お前も男のナリしてるなんてさぁ」

悪態をついてみるが、静也は顔をあげなかった。
よく見ると震えている様だし、泣いているのかもしれない。

「……おい」

彼は不安にかられて、同じ様に屈んでみる。

顔を覗き込む様に見ると、やはり泣いている様だった。

「ちょっ、……ええー?」

困り果てた彼はオロオロと行き場なく手を振り回す。

「お、俺が悪かった!だからその……泣くなよ」

そう言って、彼女の頭をそっと撫でた。



 
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