怪盗は静かな夜に出会う


そして、静也が目をはなしたほんのわずかな隙に『暁の祭杯』が消えた。

その場に残された痕跡や目撃証言から、盗まれたという事が発覚する。

非公式の持ち出しであった事から言っても、下手に警察に被害届けは出せない。

「その男は、持ち出させたのは自分だから必ず責任持って探し出すと言って兄をなだめた」

男からは何か進展があれば必ず連絡を入れるという約束をもらって、静也は帰路に着く。

ところが、いつまでたっても男からの連絡は入らなかった。

「兄は何度もその男に会おうとしたけれど、全く会う事は出来なくなって……」

静也は現当主である母には話せなかった為、妹の静夜にその事を打ち明けたという。

「それが、兄の失踪前夜の話」



そして、静也はその翌朝には姿を消していた。



 
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