幕末桜
…この女の顔を見た時、俺は今まで味わった事の無い感情を覚えた。

島原にいる女よりよほど綺麗な顔をしてやがる。

……まさか…な

間者かもしれねぇ見知らぬ女に一目惚れなんぞ

…俺らしくない。

…くそっ

なんなんだ……

何故か総司がやって来て、この女が間者では無い事が分かった。

何しろ真顔で‘どこも悪く無い’なんか言われたら…

信じるしかねぇだろ……

しかもこの女の目、嘘ついてる目じゃ無かったからな。

…しかもだ。

‘未来から来た’なんぞ信じる俺じゃねぇが…

こいつのまっすぐ俺達を見ているその目が…

ゾクッとするほど真剣で、真実を言っているようにしか

見えなかった。

だから信じたんだ。
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