幕末桜
私が女中として八木低で働き始めてもう一ヶ月が経とうとしていた。

まだ確実な証拠は掴めていない。

そして最近ますます忙しくなり山崎さんへの報告も出来なくなった。

きっと今頃、皆心配しているだろうなぁ…。

(早く証拠を掴んで早く帰りたい…)

私は小さくため息を吐いて洗ったばかりの洗濯物を干した。


それからいつもの仕事をこなし芹沢にお茶を持って行こうと芹沢の部屋を訪れると、

「…芹沢さん、そろそろいい時期かと…

あまり時をかけすぎるとこちらが殺られますよ…」

(…この声、新見…。時期って…?)

「…うむ。菊屋から金も受け取ったことじゃし、そろそろ良い頃かも知れぬのぅ…。のぅ、お梅?」

「へぇ。…芹沢はん、本間に近藤はんがおらんようなれば…」

「あぁ。新撰組の金は全てわしらのもんじゃ。近藤がおらんようなればあやつら試衛館組も終わりよ…」

「楽しみどすわぁ」

「新見、そなたも憎き土方の苦しみながら死ぬ哀れな姿が拝めるのぅ…」

「はい。誠にそれほどにない幸せにございます」

「まこと、恐ろしき男よ…。事は明日じゃ。近藤を消した暁には金を前に酒を酌み交わそうぞ」

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