幕末桜
「蝶、自分の力を信じて…。貴方なら大丈夫よ…。蝶…」

そう言うと桜姫様は消えた。

(…自分の、力…)

山崎さんは新見と必死に戦っている。

どうやら芹沢は剣が使えないらしい。

(…私はっ!!!!)

愛する人達を、救いたいっ!!

私は痛みを堪えて力を絞りだし走り出した。

「っ!!あかん!蝶ちゃん!!死んでまう!!!」

そんな山崎さんの声を背中に浴び、私は八木低を飛び出した。

一歩踏み出すたび、血が流れていく。

淡い白だった着物は血で真っ赤になっている。

もう体は限界を超えていた。

意識が朦朧とするなか私は屯所へと京の町を走った。

走って走って、ようやく屯所が見えた。

門を通り、広い庭を通りぬける。

今はもう夕餉時だ。

食堂から明るい声が聞こえる。

そしてようやく玄関についた。

ドサッと勢い良く倒れこむ。

血が止まらない。

(…駄目…もう…意識が…)

「…誰か…」




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