《続》跡目の花嫁さん~家元若旦那の危ない蜜月~
「栗原から訊いた。君が相馬社長の新しい秘書の緑川君の奥様だって」


「え、あ…そうです」


「緑川君は叔母が習ってる華道の次期家元らしい。わざわざ、ウチの会社まで落し物を届けてくれた礼がしたい。どこかで食事でもどうかな?」


「私は別に…礼だなんて。当然のコトをしたまでで」


「当然と言っても…電車を乗り継いで来てくれたんだ。手間と時間はかかっただろっ?」


「別に…」


誠一郎さんに似た濱部社長に言われたら、何だか拒めない。


「何がいいかな?フランス料理?」


「そんな…」

たかが、落し物を届けただけでそんなゴージャスなディナーをご馳走になるのは気が引ける。


「私がいつも、行っていた店でいいです」


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