《続》跡目の花嫁さん~家元若旦那の危ない蜜月~
「奥様、戻って来ました?」


「ん、あ…まだ、戻ってない…」


「・・・あのう、また万年筆、落としてたと言うか…」


「そう、また君が拾ってくれたの?どこに落としたのかと思ってたけど。君にあげるよ」



「で、でも…!?あの万年筆…高いでしょ?」


「・・・」
濱部社長は足を組み、考え込むように人口滝を見つめた。



その瞳は私と同じで黒い翳りが見えて、陰鬱だった。



何気なしに濱部社長と私は同時に、手をベンチに乗せた。


不意に重なった私の手と濱部社長の大きな手。



「ワザとじゃないよな…」


「ワザとじゃありません」




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