自分の中で
義男は香奈の事はなんだかんだ言っても好きであった。
だから香奈の手前、努力をしないといけない事はわかってはいた。
義男は面接会場に来ていた。
巨大なビルの前には中途採用の面接とはいえ、五十人ぐらいの人間が会場に来ていた。
義男はなぜか心の中が軽くなった。
これだと、間違っても受からないと確信したからだ。
義男は足元が急に軽くなった。
義男は周りの人間達と歩調を合わせ、面接会場に入った。
控え室に入ると、義男はすぐに、煙草に火をつけた。
会社の人間が部屋の様子を伺っているのは、もちろん承知していた。 義男は何回もこんな状況を経験しているので、人間達の動きが手に取るようにわかった。
義男が煙草を吸い始めると、周りの人間達もつられて吸い始めた。
俺の真似して大丈夫なのかなと内心思っていた。まあ俺は最初から受かる気なんかないから。 「川原義男さんどうぞ。」
義男は何回も経験があるが、この瞬間だけは何回経験しても緊張した。 義男は面接会場に入った。
そこには、偉そうなおっさんが、長椅子に三人座っていた。
場所は変わっても見られた風景だ。ただ違うのは、いかにも仕事ができますよと体からにじませている女性が座っていた。
結構美人であったが、険しい顔をしていた。 義男はさっさと面接を終わらせて帰りたかった。
四人の後方から、午前中特有の柔らかい陽が差し込んでいた。
その向こうには、巨大なガラスを通して、何も語らないビル群が義男の視界に飛び込んできた。 場違いな所だと義男は思った。
まあ受かるわけないし、適当に時間を浪費するだけだ。
「川原さんはなぜわたくし達の会社を受験されたのですか。」
女性が質問した。 義男はとっさに女性を見た。
義男は女性の顔を見ると、いつしか目線が、短いスカートに向かった。 やばいと思いながらも、目線が。
一瞬だけど、色っぽい良い足しているなあ~。「やばいやばい。」 義男は我に帰った。
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