自分の中で

義男は面接が終わり、帰路についた。
義男の表情は曇っていた。
面接で義男は当たり障りのない返答をしていた。大体職種で受けたわけでもなく、希望も持ってなんかいなかった。
もう面接が終わりにさしかかったときだった。「結局、負け犬だね。」 始めは何を言っているのか義男はわからなかった。確かに義男の前に座っているおっさんが言ったのがすぐにわかった。 義男は今までの冷静な態度がみるみるうちに変貌した。
「すいませんが、負け犬なんて、死ぬ時しかわからないじゃないですか。」
義男は何をそんなに熱くなったのか解らずにいた。
「確かに私は今まで失敗はかりかも知れませんが、これからその失敗を生かして絶対成功しますよ。」
義男は何を言っているのかわからなくなっていた。
何をそんなに熱くなってんだ、参ったなあ。 「やっと君の本音が出たね。」
おっさんが笑っていた。
「川原君みたいに、今からの時代自分の意見を言えないと。」
義男唖然としていた。やばいやばい気にいられてしまった。
間違っても受からないように、履歴書は小学校並みの字画で書いたのに。内容も杜撰で特技の欄には逆上がりと書いたり。極めつけは、職業欄に今までのアルバイトの数をたくさん書いて印象を悪くする事にも抜かりはなかった。
「これだけ沢山の経験があるのは、貴重なのかも知れません。」
女性は他のおっさん達を促した。
何を言っているんだと義男は女性を見た。
「うちの会社は人物重視だから。」
目の前にいるおっさんが嬉しいそうであった。 やばいやばい、義男は焦っていた。
「川原さんはいつから会社に入れますか。」
女性は具体的な話しをしてきた。
義男は女性を見た。
わざと女性のスカートに目線を注いだ。しかし女性は何事もなかったように、体を斜めに向けた。
「では改めて内定の電話をしますのでよろしく。」
面接は、義男の期待とは裏腹に終わった。