背徳性理論
夢人がぼんやりとテレビを眺めているうちに、綾香は夕食を準備し終えたらしい。テレビからは、くだらないバラエティー番組のサクラの空笑いしか聞こえてこなかった。
綾香がオムレツの乗った皿をテーブルに乗せ、茶碗に米飯をよそった。
「残業だったのよね」
「うん。最近では少しだけど仕事が増えているんだ」
「良いことだわ」
食事の間中、テレビはついたままだ。
それは静まり返った部屋で、二人が黙々と箸を運ぶのを夢人が苦手なせいである。
それくらい、夢人と綾香の関係は、結構義務的な内容の会話で事足りている。