背徳性理論
 

「三百六十円になります」

 
マニュアル通りのいつもと変わらない対応に、別段何も思わず代金を払う。

二人いた店員の片方、男の方は店の奥に行ったらしい。一人レジへ残された少女は、可愛らしい落ち着いた声音で対応した。

可愛いな。
夢人は、妙にその少女の顔を見つめてしまった。耳の下から顎へのラインが堪らなく滑らかで、なまめかしい。

それを意識すると、少女という表現は等しくないかもしれない。
夢人はその二十歳程の年下の彼女を前に、魅力を感じて止まなかった。
 

「ありがとうございました」

 
夢人はその年下の彼女の名字を、胸元に付けられた名札でコッソリと確認すると、後ろめたい気持ちを隠すように外へ出た。

 
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