曖昧ショコラ【短】
「ありがとうございます」


受け取った茶封筒の中には、校正が入った原稿に篠原が更に修正を加えた物。


原稿用紙をパラパラと捲って確認し、封筒に戻した。


「これはおまけだ」


「え?」


座ったままの篠原が茶封筒の上に本を乗せたから、あたしの手に書籍一冊分の重みが加わる。


「これっ……!」


「発売日は明日だからな、解禁にしてやるよ」


本のタイトルに目を見開いて篠原を見ると、彼は意味深な笑みを浮かべていた。


【失恋ショコラ】


表紙にそう書かれたそれは、あたしが読みたくて読みたくて堪らなかった作品。


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