曖昧ショコラ【短】
ただ、それらを差し引いても、これはフィクションだとは言えない。


この作品の見せ場となるハズの2月15日の情事は、日付を含めてきちんと描かれていた。


篠原は官能小説家では無いから露骨な表現は一つも無いけど、ソファーでの情事は見事なまでに美しく描かれているのだ。


失恋した女を抱く、小説家。


洋酒の効き過ぎた生チョコのように苦く、それでいてほろ甘さを感じながらドロドロに溶けた夜。


そのシーンを想像すればする程、まざまざと浮かぶ篠原との情事。


脳裏の情景は現実の物なのか、それとも物語の中の物なのか…。


もう、わからなくなる。


< 37 / 77 >

この作品をシェア

pagetop