曖昧ショコラ【短】
あたしは、傷付いていたのだ…。


「とても嬉しいです」


本当は、胸の中を占めていたのは戸惑いや虚しさよりも痛みだったのだと気付いた今、一度は押し込めたハズの言葉を声にしてしまっていた。


「先生のような有名作家の小説のモデルになれるなんて、嬉しくて嬉しくて涙が出そうです。……そう言えば、ご満足ですか?」


何て嫌味な女なのだろう。


「……何だよ、それ」


自分を過大評価するつもりは無いけど、あたしは少なくともこんな言い方をする人間じゃなかったのに…


「バカにしないで下さい」


今はもう、口が止まる気がしなかった。


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