曖昧ショコラ【短】
心当たりは、ある。


あの日のあたしの言葉に怒っているのだとしたら、本当はあたしの方が怒りたいから不本意ではあるけど、篠原の不自然な態度自体には納得は出来る。


小説家にとっては自分の子供とも言われるような作品を、担当者(アタシ)は『嫌い』だと貶(ケナ)してしまったのだ。


もちろん、作品自体を本気で貶した訳じゃない。


むしろ、ヒロインのモデルが自分(アタシ)では無かったのなら、最初に口にした『素晴らしい』の言葉の後に次々と感想が飛び出しただろう。


だけど…


あたしは胸の中で燻る蟠(ワダカマ)りを、篠原にぶつけてしまったのだ。


< 53 / 77 >

この作品をシェア

pagetop