曖昧ショコラ【短】
「おい、何してるんだ。置いて行くぞ」


口調にも言葉にも優しさは無いのに、そう言った表情も冷たいのに。


何故か、篠原の態度に優しさを感じてしまう。


「すみません……」


そんな風に感じる自分に戸惑いながらも、エレベーターに乗り込んだ。


無言のままのあたし達を運ぶ大きな箱には、重苦しい空気が充満している。


「……コンビニに行かれていたんですか?」


「あぁ」


篠原の手元のビニール袋を見ながら尋ねれば、彼はあたしを一瞥する事も無く短く答えた。


お弁当やパンがひしめき合うそれに、篠原の食生活が心配になる。


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