曖昧ショコラ【短】
考えるよりも早く、長方形の箱を取った。


明らかに女性を意識したラッピングの中身は、きっとアクセサリー。


簡単に予想出来たそれを、篠原は誰に渡すのだろう。


ツキンと痛む、胸の奥。


言葉にしたくない感情の理由がわからない程、もう子供じゃない。


食事の支度を頼まれなくなったのは、この間の事が原因だったのでは無く、恋人がいるからなのだろう。


何よりも、こんな物を渡す程の大切な人がいる篠原に、作品のネタにされてしまったのだ。


ムクムクと大きくなり続ける虚しさに唇を噛み締めた時、リビングとすぐ傍で立て続けにバンッと大きな音が鳴った。


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