曖昧ショコラ【短】
「そんな事、言われなくてもわかってます。ただ……」


あたしを見下ろす篠原の瞳を、まるで睨むようにグッと見据える。


「恋人がいらっしゃるなら、次回作にはその方をお使いになればいかがですか?たった一度寝ただけの女との話をネタにするより、よっぽど読者受けもイイと思いますよ」


何て嫌味な言い方なのだろう。


これじゃまるで、嫉妬を剥き出しにしている愚かな女だ。


「……お前、いい加減にしろよ」


眉をグッと寄せた篠原は、怒っていると言うよりもうんざりしているように見えた。


綺麗な顔を歪める彼に、それはこっちの台詞だと言ってやりたい。


< 61 / 77 >

この作品をシェア

pagetop