ボクの震動、キミの鳴動。
「だから、それは違うって何回も言ってるだろ!??」
瞬の兄ちゃんが少し怒った口調になった。
「それは本当に違うと思う」
サヤ子さんが被せる様に言葉を発すると
「勘違いもイイトコだよ、瞬くん」
青山もサヤ子さんに激しく同意した。
「安田、アンタが恩着せがましい言い方したんじゃないの??」
そして、なぜか瞬の兄ちゃんを罵る加奈子の妹。
「してねぇっつーの!!」
ちょっと瞬の兄ちゃんが気の毒。
何も悪い事などしていないのに、何故か微妙な立場になってしまっている。
「あー、瞬くんに見せたいわ。 学校での安田。 女子生徒のモテ過ぎて毎日それはそれは楽しそうにシゴトしてるから。 もうね、床に着くぐらい鼻の下伸びまくり」
青山が若干面白くなさそうに言うと
「あー。 前まで『青山先生カッコイイ』って言ってた女子生徒、半分くらい安田に流れたもんねー」
加奈子の妹が意地悪な顔で青山に笑いかけた。
「そんなにモテてんの?? 兄ちゃん」
瞬が少し嬉しそうな顔をして尋ねる。
「うん、人気モノだよ。安田は」
そんな瞬にサヤ子さんがニッコリ微笑んだ。
「安田はさぁ。 公務員という安定を手にしながら自分の好きな軽音の顧問しつつ、若い女子にキャーキャー言われてウハウハなんだから、瞬くんが気にする事なんて1ミリもないんだよ。ってなんで言わないの?? 安田」
なんで加奈子の妹は無駄にトゲトゲしいのだろう。
折角『瞬の兄ちゃんは楽しくシゴトしてますよ』って感じに収まったのに。
「『ウハウハ』はしてないから」
そして、瞬の兄ちゃんのどーでもイイ否定。
「じゃあ『デレデレ』だ」
「してない」
瞬の兄ちゃんと加奈子の妹のしょうもない口げんかを、瞬は『ククッ』と笑って見ていた。
それに気付いた加奈子の妹が『だから、余計な心配しなくてイイの』と瞬の頭を撫でると、瞬の顔が少し赤くなった気がした。
やっぱり、瞬は加奈子の妹を好きになったのだろう。