幸せの在処


「なんか用?」


顔からは想像もつかないような、冷たくて低い声だった。


思わず怯みそうになった。


けど、質問されたら何か返さなきゃ。


「風邪、引きますよ?」

「別に…お構いなく。」


高速で返ってくる返事。


その返事を悲しく思った自分がいた。


ただ風邪を引くといけないからと、見ず知らずの人を傘に入れるなんて…。


よく考えてみると、おかしかった。


急激に恥ずかしくなり、私は後ずさりした。


「す、すみませんっ…。」


一体、何を考えていたんだろう。


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