わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
弐伍
(バカなことは、やめろ)

また、声が聞こえた。

彼は、まだいる…

急に力が抜けて、ナイフが手から落ちる。

「あなた、なの?」

(ああ)

「…どこ?」

わたしは、周りを見わたす。

(傷は大丈夫か?)

「これくらい平気。あなたは、どこ?」

(おれは…もういない)

「でも、声が」

(声じゃない、おれの心さ)

あなたの心、それはわかってる。

影になったときもそうだった。
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