わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
わたしは、ベランダに片足をかける。
下はできるだけ、見ないように。
「あと少しだぞ、頑張れよー」
と彼は楽しそうに声をかける。
言われないでも頑張ってる。
こっちは必死なんだ。
あの指輪はわたしの思い出。
人生、初めての指輪。
あの後にも、確かにもらった。
だけど…
あれは特別なんだ。
片足を完全にベランダにかけ、
またぐようにして手を伸ばす。
あと少し…
そのとき、スーって風が吹いた。
指輪がこっちに揺れて…
掴んだ!